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今野浩一郎
(学習院大学経済学部教授)
経済経営研究所(GEM)所長として、産学協同の勉強会「WLB塾」に参画。3年におよぶ活動をGEM編著の出版物としてまとめあげ、成果を社会に還元するWLBプロジェクトを率いる。

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木谷宏
(学習院大学経済学部特別客員教授)
株式会社ニチレイの人事部長時代に、「WLB塾」の設立に参加。大手企業30社とWLBの共同研究を行い、GEM発行「経営戦略としてのワークライフバランス」を執筆した。

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藤波美帆
(学習院大学経済経営研究所 所員)
経済学部卒業後、社会人を2年経験し、その後大学院に進学。GEMの客員所員として、「WLB塾」の調査研究活動に参加。

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西岡由美
(湘北短期大学総合ビジネス学科専任講師)
経済学部卒業後、大学院経営学研究科進学。「経営戦略としてのワークライフバランス」では、おもに先進諸国の事例紹介の執筆を担当。

- -4月にGEMの「経営戦略としてのワーク・ライフ・バランス(第一法規出版)」が出版されました。今日は執筆者に集まっていただき、研究のこれまでの経緯などをお聞かせいただければと思います。

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【今野】
日本の主だった企業30数社からなる勉強会「ワーク・ライフ・バランス塾」から学習院に共同研究をやらないか、企業がWLBを促進するために必要な管理ツールを一緒に開発しないかと声がかかりました。民間企業の人たちがボランタリーで集まった活動であること、社会全体のWLBを推進していこうという志を持った活動であることに感銘し、「じゃあ一緒にやりましょう」と一年弱活動しました。そして2006年に、企業がWLBの普及度を測定できるツール「WLB指標」を共同開発しました。

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【木谷】
1990年代の末頃、バブルがはじけた後から企業では人事政策の見直しが始まっていました。最初はリストラ等といった後ろ向きな目的からでしたが、しだいに成果主義、フェアな処遇といった前向きな目的意識で、先進的な企業から新しい仕組みが広がっていったわけです。
もうひとつはCSR(企業の社会的責任)の普及。従業員も株主やお客様と同じように「重要な関係者(ステークホルダー)」であるという認識が広がりました。加えて、国による少子化対策が緊急課題となり、その延長線上にあるのが、WLBだと認識しています。
その流れの中で、当時、資生堂の岩田喜美枝CSR部長(現副社長)から提案があり、「子育て女性だけでなく、これからは全員が働き方を変えていかなければならない」と。日本を代表する企業でアライアンスを作ってWLBについて勉強し、その成果を社会に還元していこうと、3年間の時限的な勉強会である「ワーク・ライフ・バランス塾」がスタートしました。
初年度の2004年は、翌年から始まる次世代育成支援対策推進法の勉強会、行動計画づくりの情報交換会から始まりました。2005年は分科会を作って議論を深め、最終年である2006年は何らかの成果を出したい、客観的なWLBの物差しをつくろうと考えたわけです。たまたま、ある会合で今野先生とご一緒したときに「ボランティア組織で予算はないのですが、学習院大学で指標を作ってもらえませんか?」と、いま思うとまったく失礼で無謀なお願いをしてしまいました(笑)が、二つ返事で引き受けてくださいました。

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【今野】
「WLB指標」は塾の参加企業にテストしてもらい、十分使えそうだということになりました。そこで「WLB指標」を社会に広くアピールするために、本を出版することになりました。
またWLB研究の推進体制をつくり上げるために、企業の事情を熟知し、高い専門性をもち、ワーク・ライフ・バランス塾の中心的メンバーであった木谷氏を招き、今年からGEMに参加していただくことになったわけです。

- -WLBというからには海外から入ってきた概念ですね。海外のWLB事情を教えてもらえますか?

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【西岡】
本の中でも紹介していますが、先進諸国の事例には大きくわけて2つのタイプがあります。国や地方自治体の社会福祉政策の一貫として始まった大陸ヨーロッパ型、企業の経営テーマの1つとして始まった英米のアングロサクソン型です。
北欧では家族政策の一環として早くから取り組みが始まっていますし、特に私がいいなと思ったのは、フランスでは女性の就労の有無に関係なく、一律な子育て支援サービスが受られることです。
またアングロサクソン型では、イギリスのブレア政権が目玉政策として「WLBキャンペーン」を推進し、国が中心となって政府が助成金を出すなど企業に働きかけました。このため、WLBがイギリス発と思っている方も多いようです。一方アメリカでは、WLBよりも「ファミリーフレンドリー」という言葉が使われており、優秀な人材を確保する施策として企業が率先して進めています。

- -「WLB指標」を共同開発するにあたって、どんなご苦労がありましたか? またGEMのこれからの活動としてはどんなことをお考えでしょうか?

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【藤波】
WLBの定義も人によってまちまちですし、ゼロから指標をつくりあげるために、最初の議論は錯そうしましたね。
WLBを企業調査だけで捉える研究は以前からありましたが、今回はあえて従業員の側にも質問する設計をしました。制度があっても、知っているかどうか、使われているかどうかもポイントですから。また経営陣のために、経営パフォーマンスを計る計算方法も作り出しました。

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【西岡】
私は主に個人側の調査を担当したのですが、データ分析をしていて面白かったのは、企業側が制度を用意していても従業員が知っていなかったり、制度がないのに従業員は当然あるものと思いこんでいたりと、大きなギャップがあったことですね。ニュースなどで制度の名称を知っていても、自分の会社に本当にあるかどうかをあまり確かめていなかったりします。

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【今野】
国が懸命に旗を振っても企業がなかなか動かない、さらに企業の幹部がやるぞと言っても現場がついてこない。この二重のギャップがあると思いますね。総論としてはWLBが必要だとわかっているけど、それを導入すると現場の運用が大変になる。当たり前の話ですが、「WLBを進めた時にどうやって仕事をまわすの?」という大きな問題がまだ横たわっているということです。
現時点でのWLBの研究成果は、WLB指標を開発したこととベンチマークデータを作ったことですが、これから指標を改善していくとしたら、仕事の管理や人事管理全体まで視野を広げていかなくてはならないということでしょうね。

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【木谷】
企業はまだWLBに対して切実感がない、福利厚生と同じような衛生要因程度に捉えているのが現状ではないでしょうか。
私は働く人の間で「第三の報酬=時間」に高い価値をおく人が増えていることを実感しています。時短は完全に報酬の問題であり、働きやすさというよりも、もっと高いインセンティブになっていると思います。時間という"報酬"によって従業員の生産性は上がるということ、私はその点がまだ経営陣にきちんと理解されていないよう気がします。

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【今野】
時間価値というのは面白いですね。時間価値が高いということを意識して、それを人事管理の仕組みに落とし込んでいる会社が「いい会社」といえる(笑)。
GEMでは現在、WLB指標を使って社会に貢献しようということで、さまざまな企業や業界団体、たとえば日本看護協会などと共同プロジェクトを進めています。
WLBを、人事管理を根本から変えるものであると広く捉えながら、GEMがこれから日本のWLB研究のプラットフォームの役割を担っていけるといいですね。WLBのツールなら学習院と言われるように、データベースとツールを充実させてWLBを目指す企業にどんどん導入してもらい、広く社会に貢献していきたいと考えています。








